胸騒ぎのシチリア 公式サイト

年下の恋人とヴァカンスを楽しむトップスターのマリアン。
そこへ、美しい娘を連れた昔の男が現れ、誘惑と嫉妬が交錯するー。

新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか、絶賛公開中!

『グランド・ブダペスト・ホテル』
レイフ・ファインズ

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
ダコタ・ジョンソン

『リリーのすべて』
マティアス・スーナールツ

『フィクサー』
ティルダ・スウィントン

(原題:A Bigger Splash)

Production Note


 『ミラノ、愛に生きる』を観て、ルカ・グァダニーノ監督の才能に惚れ込んだ映画製作会社のスタジオカナルは、彼を自社で権利を持っていた1969年の映画『太陽が知っている』のリメイク版の監督に起用する。アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー、ジェーン・バーキンといった錚々たる顔ぶれが出演し、ジャック・ドレーが監督したこの映画のどこに興味を引かれたか、グァダニーノ監督はこう語る。「欲望が、人と人との間にどの様な影響を与え、どんな駆け引きやトラブルを引き起こすのか…という点に興味が湧いた。欲望は過大評価するか軽視するかによって、破壊的な力にも、実りの多い創意に富んだ力にもなり得るのだ」また、監督は二つの世代の対立を盛り込みたいと考えていた。「もう存在しない20世紀末のロックの世界と、今日の私たちを支配している新しい保守的な時代の溝を描くことを思いついた。人生を強引に楽しもうとするロック世代と、安全に生き延びようとする世代の衝突だ」とグァダニーノ監督は説明する。

グァダニーノ監督とティルダ・スウィントンの親交は20年以上になる。彼女を主役に選んだことについて、グァダニーノ監督はこう説明する。「ティルダと一緒に仕事をするというのは、役者を演出するということではなく、映画制作者と組むということになる。コラボレーションをする時は、いつもそういったものを求めている」マリアンが話せないというのは、ティルダのアイディアだ。「台詞で全てを語るのは好きじゃないわ。伝えようとして失敗したり、言葉のないコミュニケーションこそ、そそられる」とティルダは語る。ハリーが周りの人間を巻き込む“言葉の海”で、マリアンだけは言葉のゲームに参加してはならないというルールが、物語を面白い展開へ導くこととなる。「その発想は、映画制作の中でもレベルの高い一例だと思う」とグァダニーノ監督は称賛する。

レイフは今まで、憂うつで暗いエネルギーを持った、心に葛藤のある人物や、ロマンティックな役柄を演じてきた。しかし、ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』の予告編を見た時に、閃いたとグァダニーノ監督は振り返る。

「レイフが、図々しくて皮肉たっぷりで軽い人物を演じているのを見て驚いた。彼にはハリーに近いものがあるのを強く感じた。私にとって役者を選ぶというのは、演技ではなく登場人物の中に役者の要素を見つけ、役者の中に登場人物の要素を見つけることだ」脚本の説得力に感銘を受けて出演を決めたというレイフは、グァダニーノ監督に「是非この役をやりたい。この人物をよく知っているような気がするんだ」と語ったという。


脚本の「ハリーが踊る。彼はダンスがうまい」というト書きを見たレイフは、彼が「偉大な女性」と称賛する、振付師のアン・イーに相談した。「アンはダンサーではない人間に教えるのがうまい。心と身体を解放して、ダンスに間違いなんてない、どんな動きでも構わないと思わせてくれるんだ。そういう意味で、あのダンスは彼女がいなければできなかったね。今回は実際に現場に隠したスピーカーから「エモーショナル・レスキュー」を流して聴くことができた。それは素晴らしかったよ。太陽が照り付ける家の屋上で、ストーンズを大音量で流しながら、ダンスをしたいと誰しも思うんじゃないかな(笑)」とレイフは振り返る。ハリーが踊り狂う姿は、一見滑稽に見えるのだが、「手放した女性をもう一度自分のものにしたいが、既に手遅れで、子供のように泣いてやる。」という「エモーショナル・レスキュー」の歌詞は、マリアンへの切ない想いを表している。


パンテッレリーア島とロックを映画の柱にしようと考えたグァダニーノ監督は、ローマで彼らがコンサートをやっていると聞きつけて会いに行き、ロン・ウッドとチャーリー・ワッツに会うことに成功した。「彼らは洗練されていて感じがよく、私たちに助言をくれた。例えば、ストーンズのアルバム「Voodoo Lounge」からの「Moon is Up」という曲を作るにあたって、ゴミ箱を楽器にして録音したという裏話を教えてくれたんだ。これにより、ハリーをストーンズの歴史の一部に組み込む事ができたんだ」と監督は語る。こうして、ザ・ローリング・ストーンズの歴史の事実に根差しながら、ハリーのキャラクター像が構築され、物語が肉付けされていった。

舞台のパンテッレリーア島で、実際に撮影することを強く望んだのは、グァダニーノ監督だ。彼は「ありふれたリゾート地や別荘ではなく、他人同士であることの危険な感覚や、登場人物の衝突をもう一段階進めるような、生まれ持った危機感や本能が剥き出しになるような場所が必要だった。」と説明する。

地中海の魂、そして愛と憎しみという色あせない永遠のコントラスト、美と野生、人間の感情、そういったもの全てが、ストーリーとキャストによって完璧に描き出されることとなった。